Respect the Artist 竹村京 KEI TAKEMURA
1975年、東京生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画修了。現在、群馬県を拠点に活動。代表作に写真やドローイングの上に刺繍を施した布を重ねた平面のインスタレーション、壊れた日用品の破損部分を白い絹糸で縫い直した修復シリーズがある。主な展覧会に、「ヨコハマトリエンナーレ2020」横浜美術館(2020)、「長島有里枝×竹村京 まえ と いま」群馬県立近代美術館(2019)、個展「どの瞬間が一番ワクワクする?」ポーラ美術館 アトリウムギャラリー(2018)など。
竹村京は、「刺繍」という行為で、アートを、時間を、記憶を再構築する。「刺繍」によって、白いキャンバスには時間が流れはじめ、壊れたものには記憶が浮かび上がる。彩り豊かな糸が、何を結びつけてくれるのか。
ようこそ、「白い時間」へ。
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、休館日・開館時間等は変更となる場合があります。
事前にP.G.C.D.のHPで最新情報をご確認ください。
竹村京「白の時間〜Time of white〜」
受付は終了いたしました。
「竹村京の描く白い時間」
牧口千夏
竹村京との初めての対面は、誰かと会ったり遠方に出かけたりすることが憚られる時期を少し過ぎた頃だった。名刺交換と称して、竹村が提示するトランプカードの束から一枚選ぶとハートのジャックが出た。「なるほどねー」と独り言を呟きながらアドレスを書き込む彼女が何を考えていたのかは教えてもらえなかったが、彼女はまるで魔法のように、一枚のトランプを自分だけの特別な存在に変えてしまった。世界各地のアンティークのトランプを白のオーガンジーで包み、刺繍を施した〈Playing card〉も、竹村の巧みな仕業によってありふれた既製品が特別な存在となる——そのプロセスはまさに私たちが「美術」と呼ぶものだ。
「壊れに光を与えようと続けてきた」と、今や竹村のライフワークとなった〈修復された…〉シリーズは、2000年に留学先のベルリンで洗濯機の上に置いていた器が落ちて壊れた出来事に始まり、カードと同様、白のオーガンジーでくるんだ上から、器の傷跡に釜糸(日本刺繍糸)でさりげなく刺繍が施されている。ふんわりと包む布の半透明の白によって、壊れにまつわる現実の苦い経験は少しだけ遠い記憶となり、とはいえ決して消えることはない傷=痛みとして観る者に提示される。白の布はいわば経過する時間と同じような効果を果たしているようにも思える。時間と色の関係。今回の展示に作家が寄せた文章で、創作のアイデアが生まれる瞬間を「白い時間」と名付けているように、竹村の作品にとって白は揺るぎなく基本となる色である。
〈Time Counter〉シリーズは、群馬県の特産品である蚕が生み出した釜糸を用いて、およそ1.5cmの返し縫いを左上から右下へと一方向に布一面に施した作品で、ヨコハマトリエンナーレ2020で発表された蛍光シルクを用いたパフォーマンスが記憶に新しい。縫う過程で作家の脳裏に浮かんだ過去の時間にふさわしい色を与え、その色の糸をとって刺繍を施していく。いま・ここで作るという作家の身体性を刻みとどめる刺繍が時間の一方向性を可視化する一方で、彼女の脳内で起きていることはむしろ過去の時間へのランダム・アクセスである。つまり私たちは二つの時間のあらわれ――「流れる時間」と「行き来する時間」を重ね合わせながら作品と対峙することとなる。今回展示されるバージョンでは、刺繍が布一面ではなく断片的に施されており、時間に対する竹村の新たなアプローチがみてとれる。もし過去のある時間に色の名前をつけるとしたら、あなたは何色を思い浮かべるだろうか。そんな想像を巡らせながら、竹村の時間に寄り添ってみるのもいいかもしれない。
京都国立近代美術館
主任研究員
牧口千夏
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竹村京「白の時間〜Time of white〜」
受付は終了いたしました。
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